プルトニウム再処理は危険で高コスト

「プルトニウム再処理は危険で高コスト」
:『Nature』誌掲載


世界のプルトニウム保有量は膨大で、毎年増加している。高コストで危険なプルトニウムの再利用をやめ、埋設処分すべきだというコメンタリー論文が『Nature』誌に掲載された。

六ヶ所再処理工場 (ろっかしょさいしょりこうじょう) は、日本原燃が所有する核燃料の再処理工場。
1993年から約2兆1,900億円の費用をかけて、青森県上北郡六ヶ所村弥栄平地区に建設が進められている。現在試運転中である。

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コロラド州ロッキーフラッツにある米エネルギー省のプルトニウム保管庫(1988年撮影)。なお、ロッキーフラッツでは1969年に、プルトニウムが主な発火源になった火災があった。Image:DOE Office of Legacy Management

プルトニウムの再利用は高コストで危険であるため、埋設して処分すべきだというコメンタリーが、5月10日付けで『Nature』誌に掲載された。[筆者はプリンストン大学のフランク・フォン・ヒッペルら]

イギリスでは、民生用プルトニウムの保有量が世界最大の約90トンにのぼっている。世界全体のプルトニウム保管量は約500トンにのぼるが、これは核兵器を10万発作るのに十分な量だ。核廃棄物中に含まれる分も入れるとこの量は大幅に増え、米国だけで約620トンになる。そしてこの数字は、毎年23トンずつ増え続けている。

プルトニウムは高速増殖炉に用いると効率的とされるが、高速増殖炉は1950年代から開発が続けられているにもかかわらず、いまだ商業的には成功していない。


軽水炉でMOX燃料を利用することをプルサーマル利用という。日本では複数の原発でプルサーマル利用が行われており、福島第一原子力発電所3号機もプルサーマルだったが、爆発事故により廃炉が決定した。プルトニウムと劣化ウランから作られる燃料は、混合酸化物(MOX)燃料と呼ばれる。

フランスでは、プルトニウムを分離・再利用したMOX燃料を20年近く利用している(このプログラムは最初核兵器用に始められた)。しかし、再処理には非常にコストがかかるため、プルトニウムを再利用すると、プルトニウムを埋設してウランのみを燃料とする場合に比べて、発電コストが年間7億5,000万ドル近く増えることになる。

イギリスは、2001年にMOX燃料製造工場を建設し、稼働率1%で稼動していたが、2011年にこれを閉鎖している。この「実験」には23億ドルがかかった。


2010年の本格稼動をめざし、2006年に「アクティブ試験」を開始したがトラブルが続き、これまでに18回完成が延期されている。その結果、建設費用も当初発表の7,600億円から、2011年2月現在で2兆1,930億円と、2.8倍以上に膨らんでいる。2006年4月〜2009年3月に再処理された使用済み核燃料、および放出された放射性物質の量はこちら日本のプルトニウム再処理工場は、稼動わずか2年、たった4トンを分離しただけで、トラブルにより2008年に運転を停止した。2012年1月に運転再開が計画されていたが、トラブルで再び中止されている。

さらには、2011年3月の福島第一原子力発電所事故によって、実質的には日本の原子力計画そのものが宙に浮いた状態だ。5月5日以降、日本の原発は1基も稼働していない。

by yakuraibosi | 2012-05-28 18:11 | Comments(0)
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