年金受給者 葉書1枚返送しないだけで税金が無茶苦茶取られる

 年金を受給している高齢者は、重税感を強めている。この20年の間に「老年者控除」「配偶者特別控除」「年金控除」が廃止や縮小されたことで、年金世帯の天引き額が大きくなったからだ。

 現在80歳の人が年金生活に入った20年前、夫の年金270万円の世帯(妻は国民年金を受給)は「住民税非課税」で手取りは約265万円もあった。ところが、現在は同じ年金額でも手取りは約233万円と32万円も減っている。

 そして年金生活者が完全に騙されているのが年金の「確定申告不要制度」だ。これは2012年からスタートし、政府広報オンラインではこう紹介されている。

〈年金受給者の皆さんの申告手続の負担を減らすため、公的年金等による収入が400万円以下で一定の要件を満たす場合には、所得税及び復興特別所得税の確定申告を行う必要がありません〉

“税務署に行かなくていいなら助かった”──この制度の狙いは年金生活者にそう思わせることにある。

よく読んでいただきたい。「申告手続の負担を減らす」とあるが、「税金の負担を減らす」とは書かれていない。実は、年金受給者の多くが、本来支払うべき金額よりはるかに多額の税金を年金から天引きされている現実がある。

 そんな人が面倒くさいと確定申告しなければ税金は“払わされ損”になり、国は丸儲けである。国税OB税理士の内田誠氏の指摘だ。

「年金受給者には毎年8月末以降に日本年金機構から『扶養親族等申告書』という葉書が送られてくる。これに配偶者など扶養親族の所得情報などを書き込んで返送しなければならない。いわば年金受給者の年末調整のようなものですが、出し忘れると年金額の1割近くのとんでもない税額を天引きされる仕組みになっている。年金300万円の人なら本当は税金を7万円くらい払えばいいのにざっと27万円源泉徴収されます。実は、高齢者にはこの葉書を返送しないで高い税金を取られたままの人が非常に多い」

 葉書1枚で天引きされる税額が4倍に増える? なぜそんなことが起きるのか。

 原因は年金の税額計算のルールにある。葉書(申告書)を返信すれば、年金機構が一人ひとりの支給額から各種控除を差し引いて課税所得を計算したうえで、所得税率5%で課税する。だが、葉書を出さない人は公的年金等控除さえ縮小された上に、所得税率10%の高い税率の税額が源泉徴収される。

「返信しない受給者が悪い」

 しかし、そもそも年金機構は受給者の年金収入を把握できるはずだ。税金計算にあたって、受給者全員が対象になる公的年金等控除の負担軽減措置まで縮小してわざわざ高い税額を計算する理由がわからない。日本年金機構の説明はこうだ。

「扶養親族等申告書の提出は受給者の義務。未提出の場合は源泉徴収する金額は大きくなる。これは所得税法のルールに則ってやっている。税金を払いすぎている人も最終的に確定申告すれば還付される」(広報室)

 葉書を返信しないとペナルティで高額の税金を課税されるというニュアンスだ。政府広報で「年金受給者は確定申告を行う必要がありません」と宣伝しながら、取られすぎた税金を還付してほしいなら確定申告すればいいとは呆れる。

 まるで高齢者が葉書を出し忘れ、確定申告もしないことを見越したような税金ぼったくりの仕組みではないか。

※週刊ポスト2018年3月9日号


by yakuraibosi | 2018-03-09 20:18 | Comments(0)
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